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NEW 2026.06.11
皆さま、こんにちは!
自由が丘店の行場です。
前回、前々回の投稿には目を通していただけましたか?
先日の山形研修の様子を全3投稿でアップしておりますので、
ご覧になっていない方はお時間のあるときに是非!
今回はその最終弾です。
この投稿では米富繊維・天童木工・オリエンタルカーペット社
3社それぞれの凄みをさらに深堀りしていきます。
是非最後までお付き合いくださいね。
私は3社がこれまで長く発展し続けてこれたのは、
考えることを辞めずに会社をアップデートしてきたからだと考えています。
どこを変えて、どこを変えないか。
慎重に見極めてきたからこその今があると思えたのには、
それぞれが歩んできた歴史が大きく関わっています。
山形がニットの産地となった理由に戦後の物資難が関係していることは
既に前々回の投稿でお伝えしましたが、
他の2社もやはり戦争の影響を受けていました。
天童木工は元々、若者たちを戦争へ送り出すことを防ぐ目的で、
職人たちが組合となり杉で弾薬箱を製造し始めたのが創業のきっかけだそう。

戦前から培われた職人たちの技術は、
やがて戦後の日本で人々が暮らすための家具に落とし込まれました。
オリエンタルカーペット社の工房は約80年変わらない、
窓が多くピンク色を基調とした建物です。

この外観には当時あまり良いイメージがなかった職人たちの労働環境に少しでも多くの光を取り入れよう、
そして創業者が目指した地域の女性に雇用の場を設けるという志が密接に関係しています。
柔らかで暖かさのあるピンク色の外装塗装は
創業者の決意の象徴として今でも変えずに、
会社は実際に若い女性の雇用に尽力しています。
ウールなどの資源が手に入らなくなった戦後には、
葛の根を湯掻いて糸を独自で開発し、
羊毛が配給されるまで実際に使用したそう。

このような工夫からは磨き上げてきた緞通技術を
なんとかして未来に残そうとする意地を垣間見ることができます。
さらにこのような会社のアップデートの一環として
3社に共通していたのが、自社の発信と細かな要望への向き合い方です。
オリエンタルカーペット社が強みとして挙げているのが、
本来別工場で行う複数の工程を全て自社の工房内で完結させていること。
これは米富繊維と似た生産体制です。
数本の糸を撚るとき、配色に微細な変化をつけることで
目で見て分からない程度の色の違いを出しています。
この複数の糸の断面が仕上がった緞通の表面になるため、
糸一本ずつの色の調合がわかりやすく出ます。
それがよく分かるのがショールームに展示されていたこの緞通。

敷地内に染色工房を構えていることで糸を染める色のバリエーションが多く、
緞通作りにおいて多彩な色使いが可能となり、
墨絵で描かれた鳥獣戯画の細やかな点や線まで表現できています。
その多彩さを証明するかのように、
染色工房にはおよそ2万色にも及ぶ試し染めのサンプルが並びます。

どうやら天然繊維を扱うとなると、やはり多少の色ブレは
気温や湿度、ロット差などで生じてしまうため、修正の作業もあるそう。
私が感じたのは、そういった糸の表情の違いなどの個体差は
世界的な流れでもある大量生産の体制ではなく、少しずつではあるが
丁寧な手仕事から生み出されたものの証拠であるということ。
ここを理解しているのといないのとでは、
もちろん製品を目にしたときに受け取る印象も違いますが、
「いかにじっくり時間をかけて丁寧に作り上げられた本物かどうか」
の判断にも影響してくると思います。
「修正作業もありますが、うちにはプロがいるのでそこまでブレません。」
この言葉から、職人さんの腕に対する厚い信頼を感じることができました。
思えば米富繊維でも、過去に作った生地のサンプルが
ずらっと並ぶ棚の数々を見せてもらったときに、
「数年前でこのくらいの数だったけど、今はどうだろう…」
と何点あるのか検討がつかない様子でした。

長きにわたりこだわって挑戦し続けてきたブランドは、
こうして少しずつではあるものの確かな実績を積み上げてきているのです。
山形緞通は近年、デザイナーズラグだと言われるほど
個性的なデザインが増えています。

この製品では染色方法自体を変え、糸そのものにグラデーションをつけることで
デザインの塗り絵っぽさや手書きの線ならではの歪みを上手く表現しています。
一方で、素足の生活様式に馴染みのある
現代の日本人の生活の場において人気なのが無地のコレクションだそう。

仕上げの際に粗が出やすいという無地ならではの難しさがあるものの、
足で踏んだ跡が綺麗に残るよう工夫したり、
無染色の糸にも防虫防臭加工施す徹底ぶり。
多彩な色使いをアドバンテージとするオリエンタルカーペット社のものづくりも、
時代に合わせたアップデートを繰り返し、あえて無地の緞通で挑んでいるのです。
自社の強みを活かしているのは米富繊維も同様です。
毎年のように新しいブランドが登場するものの、
ベーシックなものだとどうしても変わり映えしないことから、
服を製造するにあたって必要な工程が一箇所に完結している
米富繊維だからこそできる提案をしようと考え、
服を販売する企業に対する縫製工場としての役割を果たすにとどまらず、
実際に服を着用する人に向けてオリジナルブランドを立ち上げました。

つまりYonetomiやCOOHEMに見られる独創性は、
他でもない米富繊維だからこそ生み出せるデザインなのです。
「他にはない」という言葉、響く方が多いのでは?
「ありふれたもののなかからどこにもない個性を編みだす」
「オリジナリティが極めて高いモノづくり」
いずれのキーワードもブランドのホームページから抜粋したものですが、
まさに米富繊維の仕事を上手く表現していると思います。

前回の投稿では「デザイナー」という「個人」の要望に
技術で応える天童木工についてお話しましたが、
他の2社もやはり、「使用者」という「個人」の声に
真摯な姿勢で向き合っている点が共通していました。
オリエンタルカーペット社は元々、有名家具メーカーから受ける委託製造や
ホテルの内装などをメインに手掛けてきましたが、
「山形緞通」のブランド化以来、個人の希望に沿ったデザインや
住居の設計に合わせた緞通を、いわゆるオーダーメイドという形で製造、販売しています。
天童木工も同様に、圧着技術を活かして
木材とは異なる素材を使った個人的な注文に応じています。
今までしてこなかった自社独自の技術を発信してみようと考え、実行し今がある。
ある時はその時代によって受ける影響を創意工夫で乗り越え、
ある時はその時代に合わせた方向へ舵を切る。
その中でものづくりに対する情熱的な姿勢は決して変えない。
「変わっていくことといかないこと」
「変えていくべきこととそうでないこと」
私は目まぐるしい状況のなかでも意思決定を繰り返し、
自分たちの持つ技術に誇りを持ちながら発信していく姿に感銘を受けました。

変わる変わらないの塩梅は、STEPSのお店に集められた商品からも
ところどころ感じることができますね。
普遍的、本質的、本当に良いものは変わりませんが、
時代や気分によって細かな変化があるのは当然のこと。
もっと言えば数多ある物の中から本当に意味で「良いもの」が分かるバイヤーの目線で判断し、
STEPSなりの篩に掛けて残った物しかお店には置いていないのです。
そこからさらに一人一人のライフスタイルに合うものを探し当てれば、それはそれは間違いない。
長年連れ添う変わらない相棒になるはず…
今回3つの投稿にわたりお伝えしてきた、
私たちが山形で見て聞いて感じてきたこと。
知っているのといないのとでは、「いいね」の重みが違うはず。
実際に私も物を見る目線が新たに増え、
「いいね」と感じる物が少しずつ変わってきた気がしています。
言葉にして伝えるのは少々難しいのですが…
最後に私が今回素敵だと感じた3点で締めくくりましょう。
(完全に私主観です。)
①Yonetomi NEW BASIC T-SHIRT

最近では米富繊維をニットではなくTシャツをきっかけに知る方が増えているそう。
どうやらSEEK&FINDで別色の取り扱いがあるとのこと…!
②天童木工で日光浴中の家具たち

屋外で使用できる家具の開発を目標に、
工場の前にある広場にて木材を日光に曝すことによる影響を実験中。
③山形緞通「KOKE」

隈研吾氏との共同開発で、日本古来の原生林を彷彿とさせるデザイン。
表面の毛の長さにあえて差つけ、苔らしさを表現している。
物にありふれた世界に慣れ、思考停止癖がついていた自分にとって、
パッと見ではどう作られているのだろうと考えることすらしなかったディテールの数々。
「物の見方、捉え方が増える」
皆さまにとって【山形研修】の3投稿が、
少しでもそのきっかけになれば、なによりです。